埼玉県中3生の進路希望調査第2回、まとまる

埼玉県中3生の進路希望調査第2回まとまる

埼玉県中3生の進路希望調査第2回がまとまりました。埼玉県教育委員会は1月11日、12月15日現在の県内中3生の進路希望調査結果を発表しました。

1. 全体概況

まず、卒業予定者数は66,370名と、前年の66,760名より390名減少、特別支援学校を除いた中学校だけでも397名減少しています。高校進学希望者は進学希望校未定者を除いて65,120名と、やはり300名の減少でした。

高校進学希望者の内訳を見てみます。全日制高校進学希望者は62,038名で前年より259名減、県内全日制公立高校進学希望者は48,063名と前年より498名増でした。表のように中3生の減少で全日制高校への進学希望者数は減少していますが、公立高校の希望は増加しています。県内・県外とも国立の希望者は増えていますが、表のように1ケタで、公立希望が増えた分、私立高校の希望が減っています。10月の1回目の調査でも全日制公立希望者は増えていましたが、その傾向は今回も続いています。

また、10月の調査では県内全日制私立希望は前年比で33名減でしたが、今回は563名減と、減少幅が拡大しています。毎年のことですが、10月の調査では進路希望未定者がもっと多く、12月の調査では減少します。今年度の場合では10月に2,300名以上いた未定者800名あまりに減少していますが、この減少した未定者が、例年以上に公立志向になっていることがわかります。私立高校の希望率は県内・県外を合計すると約1%下がっていますが、県内公立の希望率も1%上がっていますから、その分受験生の志向が変化しています。

2. 公立中学卒業予定者のみの進路希望状況

埼玉県のこうした統計は、伊奈学園や市立浦和の内部進学予定者だけでなく、私立中学の内部進学予定者も含んでの発表でしたので、今までも生徒数から中高一貫校の在籍者数を引いた推計で一般の公立中学からの進路希望状況を比較してきましたが、今年度から内訳資料が公立中と私国立中とに分かれましたので、公立中からの進路希望状況を見てみます。

前年は、「中高一貫校の在籍生はすべて内部進学希望」と仮定して、県発表値から学校基本調査の在籍数を差し引いて求めた推計です。市立浦和と伊奈学園の生徒数は前年も今回も除外しています。前年は国立の埼玉大附属を公立に含み、今回は私立に含んでいますので厳密にはデータが連続していないのですが、公立中からの全日制公立希望者は242名増、県内私立希望は566名の減少です。公立希望率は1%上昇しています。

 なお、今回公立中と私国立の内訳が公表されたことで、私立中の内部進学希望についても今までより確度の高い推計ができるようになりました。表のように、国立を含む私立中3年生は3,090名で、進路希望の内訳は県内公立95名、私立2,853名、県内国立1名、県外121名、その他20名でした。埼玉大附属が含まれますから、私立中3はほとんど私立高校希望だと推定できます。埼玉県の私立中については、一部に栃木・群馬県の状況を踏まえて、「実は公立トップレベル校に抜ける生徒が案外多く、内部進学率は東京などよりも低いのでは」、といった意見を聞くことがありましたが、「私立から他の私立へ」を別とすると、そのようなことはなく、基本的にはほぼ全員内部進学を希望していると推定できます。

3. 進学希望状況の推移

グラフは公立一貫を除いた公立中の卒業予定者数、推計での全日制高校希望者数、全日制公立希望者数の推移です。卒業年度ではなく受験年度で表記しています。前述のように、前年度までは国立の埼玉大附属が含まれていますが、今回から除外していますので、厳密にはデータは連続しません。卒業予定者数、全日制高校希望者数、全日制公立希望者数とも前年とほとんど変わっていません。全日制公立高校の希望者は増えていますが、目立つほどではありません。そこで希望率の推移をグラフにしてみました。

2010年度入試は、公立入試問題の出題傾向の変更や前期で学力検査実施などの大きな改革が行なわれました。その10年度入試に向けて上昇を続けていた全日制公立希望率は、11年度、そして前後期一本化となった12年度はやや下がりましたが、13年度入試に向けては再び上がっています。また、11年度に大きく上がった県内私立希望率は、前年度はその水準を維持したものの、今回は下がっています。全日制公立希望率が上がった反動です。県外(ほとんどが東京)私立希望率は下降していて、11年度に若干上がりましたが前年度から再び下がりはじめ、今回も下がっています。県内私立高校については、公立の入試改革で避けたい受験生が出たこと、私立高校にも公立と同額の就学支援金制度が新設され、さらに各都道府県で独自の上乗せが実施され、特に埼玉県は低所得層に手厚い制度になっているため、私立志向が高まっていましたが、一段落したようで、再び公立に受験生が回帰しています。

4. 私立志向の強い地域

今年度から私国立中を除いた市町村別の内訳が公表されるようになりましたので、卒業予定者数1,000名以上の市の公立中学校の県内私立希望率をグラフにしました。卒業予定者数の多い順です。鴻巣市の16.7%が最高で、次点は川越市でした。東京隣接地区で高く、北部に近づくほど下がるという見方もありましたが、実際には川口市や草加市などの東京隣接市でも低い市があり、北部の熊谷市が全県平均を上回るなど、必ずしも東京との距離には関係しませんでした。

5. 学科別希望状況

次に、全日制公立高校の学科別希望状況です。専門学科計には、その下の工業・農業・家庭・商業系だけでなく、芸術・体育・看護・福祉や外国語・理数など、普通科系の専門学科も含みます。普通科の希望倍率が上がり、総合学科もやや上がっています。家庭科は前年同様ですが、工業、農業、商業はダウンしており、特に商業は1倍を切っています。前年は工業や家庭、総合学科の希望倍率が上がっていて、中には「手に職を」の志向が強まった、といった論調も見かけましたが、隔年で倍率が上下していますから、むしろ「入れる学校に」といった志向の方が強いと思われます。

6. 人気の高い学校・課程

次の表は、希望倍率1.5倍以上の学校・課程です。まず普通科ですが、前年の16校から23校に増えました。前年はその前の年の22校から16校に減っていますので、隔年的な変化です。トップは前年に続いて市立浦和でした。この他、前年度1.5倍を超えた学校の中で、八潮南と熊谷西が今回は1.5倍に達しませんでした。熊谷西は1.44倍で比較的高倍率ですが、八潮南は今年は人気がいま一つのようです。また、前年度は1.5倍を超えなかったものの今回は超えて表に登場した学校は、川越、川越女子、草加、和光国際、大宮南、南稜、越谷南、越谷西で、例年志願者が多い学校がほとんどですから、総じて人気動向には大きな変化はないようです。

専門学科・総合学科では前年度20校・課程が1.5倍以上でしたが、今回は17校・課程が1.5倍以上でした。今年も大宮・理数がダントツのトップです。普通科に比べて募集定員が小さいケースが多く、少々の希望者の増減でも倍率が大きく変化しますが、それでもトップの大宮・理数や、新座総合技術・食物調理、越谷総合技術・情報技術、鴻巣女子・保育と、1位~4位までは前年度も1.5倍を超えて表に入っていました。越谷総合技術・食物調理、常盤・看護、杉戸農業・食品流通、川越工業・建築も前年に続いて1.5倍以上になっています。人気校・課程の固定化傾向が見られます。なお、吉川美南は普通科の吉川高校が全日制と昼間部定時制併設の総合学科に転換する新設校ですが、初年度から1.5倍以上と高い人気です。高校再編統合による新設校は、受験生に浸透が不十分な点もあって、比較的低倍率になりがちですが、吉川美南は昨年、一昨年の入試で母体校の吉川が高倍率だったことから、転換校の吉川美南にもその人気が継承されています。

なお、統合新設校や学科改編を除いて前年に比べ、希望倍率が大きく上がっているのは、普通科が上尾、上尾橘、川越女子、川越南、越谷西、南稜、日高、本庄、和光国際、蕨、市立大宮西、普通科のコースや専門学科では八潮・体育、和光国際・外国語、秩父農工科学・農業、川口工業・情報通信、深谷商業・会計、新座総合技術・食物調理、所沢商業・情報処理、三郷工業技術・情報技術、坂戸・外国語、鴻巣女子・保育、熊谷農業・食品科学、熊谷西・理数、熊谷工業・建築、狭山経済・流通経済、越谷南・外国語、越谷総合技術・流通経済、同・食物調理、同・情報技術、浦和工業・情報技術です。

7. 偏差値帯ごとの希望状況

グラフは普通科普通コースの各校について、北辰テストの50パーセンタイル偏差値(男女単純平均・小数点以下四捨五入)に基づいて、偏差値帯ごとの希望者数と希望者数を募集定員の合計で割った希望倍率を、今回と前年度について表したものです。全体的な傾向としては、前年度と同様、希望者数が一番多いのは55~59ですが、希望倍率は65以上が一番高く、偏差値帯が下がるとともに希望倍率も下がります。45~49で希望倍率は1.07倍と、不合格の確率は1割を切り、45未満は定員割れとなっています。前年との比較では50以上のどの偏差値帯も希望者が増えており、希望倍率も上昇しています。特に65以上の希望倍率は前年の1.53倍から1.62倍に上がりました。人気が集中しています。

なお、45未満も希望倍率は前年の0.84倍から0.89倍に上がっていますが、希望者数はほとんど変わっておらず、募集定員が削減されたために倍率が上がりました。定員を満たしていたいことに変わりはありません。実際の出願では、高倍率の学校から低倍率の学校へと受験生は流れますが、50未満の学校、とりわけ45未満の学校は今年も人気がないようです。公立併願の私立の立場からは、一番多く入学者が出やすいのは65以上、45~49では入学者はたいして期待できず、45未満は入学者がまったく期待できないことになります。

8. 県内私国立高校

表は、希望者数の上位10校です。中学を併設している学校は、5月1日現在の中3生徒数を全体の希望者数から差し引きました。公立中からの希望者数の推定です。トップは花咲徳栄でした。冒頭のように、県内私立高校の希望率は低下していますので、全体に希望者が減っている学校が多くなっていますが、トップの花咲徳栄や星野は増えていますし、早大本庄や昨年は上位10校に入らなかった正智深谷もやや増加しています。浦和実業も昨年は上位10校に入っていませんでしたが、やや増加しています。公立同様、顔ぶれは固定化傾向ですが、人気というよりも学校規模が大きいと上位に入るケースが多くなりますが、花咲徳栄や正智深谷はコースの改編が受験生に歓迎されているのでしょう。前年度上位10校だった学校のうち、秀明英光と昌平は今年は登場していません。秀明英光は希望者がやや減ったものの、12位なので例年とあまり変わらない人気です。昌平はここ数年人気が高く、多くの受験生が集まっていましたが、今回の希望調査では初の内部進学予定者(併設の中3生)を除くと191名と前年の6割の水準に減っています。全体で14位ですから人気校には違いないのですが、一番入り易かった総合進学の募集を停止したことが影響しているのでしょう。