2012埼玉県私立高校の入試結果

2012埼玉県私立高校の入試結果

2012年の埼玉県私立高校の入試結果についてまとめてみます。

1.概況

埼玉県の公立中3生徒数は、国立の埼玉大附属を含めると63,000名あまりで、昨年より1,800名近く増えています。

埼玉県の進路希望調査は私立の中高一貫校を含めた値ですので、私立中在籍生は全員私立高校に進学すると仮定すると、県内私立高校進学希望率は11.4%の横ばいでした。県外私立高校希望も横ばいです(2010年入試向けの進路希望までは下がり続けていました)。

進路希望調査で進学希望者が目立って増えていたのは、併設中がないグループでは本庄第一、栄北、狭山ヶ丘、山村学園、武南、昌平(内部進学は2013年度から)、細田学園で、併設中があるグループでは埼玉栄、開智、本庄東が、内部進学生増加を考えても、公立中からの希望者がかなり増加していると判断できました。実際の入試を見てみます。

表は志願者数の集計で、一部入試結果未公表の学校があることと、二次募集は含んでいない学校もあるため最終結果ではありません。また、昨年の数値については、追加分、修正分を反映させています。

県内私立各校の志願者数は大きく増加して71,000名あまりでした。昨年より約3,600名の増加です。昨年は一昨年より中3生数が減る年だったため、志願者の総数もやや減少しましたが、今年は過去5年間では最高の志願者数で、伸び率も約5%です。公立中3生の生徒数増加が3%弱でしたので、生徒数増加分以上に出願は増えました。

栄東は昨年約2,200名だった志願者が2,900名あまりと大きく増えました。慶應志木、立教新座、早大本庄は昨年並みの志願者数でしたので、今年の中学入試に見られたような、都内受験生の前哨戦入試が埼玉に流れたために県内私学の志願者が増えた、といった動きはあまり見られなかったようです。

もちろん、栄東は都内生も受験しますが、都内生の流れが変わった、というよりは、人気が上がって増加した、と考えるのが妥当でしょう。公立中3生の増加は東京も同じですから、所沢などの西部地区では、都内多摩地区からの受験生が増えたと考えられる学校はありました。また、今年は公立高校入試が前後期一本化の大改革の年だったため、不安を感じた県内受験生の私立併願校数は増加傾向となっています。こうした複合的な理由で7万人を超える志願者数になりました。

以下、地域ごとに見ていきます。

2. 県南部(さいたま市ほか)

この地域では栄東、国際学院、小松原女子、栄北、武南の志願者増加が目立ちます。

栄東は昨年が一昨年とあまり変わらない志願者数でしたが、前述のように今年は大きく増加しています。もちろん大学合格実績への期待です。国際学院も昨年は一昨年とあまり変わらない志願者数でしたが、今年は増加が目立っています。教務面の改革が進んでいるようですので、この影響でしょう。小松原女子は昨年に続いて志願者増となっていて、人気が上がっています。昨年同様、特進選抜や進学選抜といった、進学カラーが強いコースよりも総合進学や専門系の増加が中心です。武南と栄北は隔年的な志願者数の変化が見られる学校です。今年は志願者が増える年だったようです。

一方、大宮開成と埼玉栄は志願者が減っています。

大宮開成は隔年的に志願者数が変化していて、今年は減る順番だったようです。合格ラインに変化はないので、人気に大きな変化はなさそうです。埼玉栄は昨年に続く志願者の減少でした。人気にやや陰りが出ているのかもしれません。進学希望調査段階では好調でしたので、最終的な志望校選定の段階で考えを変えた受験生もいたのでしょう。

開智、淑徳与野、浦和学院、浦和実業、小松原、秀明英光は小幅の志願者数の増減はありましたが、総じて昨年並みでした。このうち浦和実業は選抜αを新設していますので、志願者数に大きな変化はないものの、全体的には受験生の学力水準がやや上がっているようです。新設の選抜αは昨年の選抜合格者の上位層に相当するレベルだったようです。また、進学コースと商業科に、一部合格ラインが少し下がった入試が見られました。なお、浦和ルーテルは今年も小規模な入試でした。

3. 県西部(川越・所沢周辺など)

県西部では星野共学部、城北埼玉、秋草学園、狭山ヶ丘、自由の森学園、東野、細田学園、山村学園の志願者の増加が目立っています。

このうち、秋草学園は特進αβを特別選抜に統合、進学選抜ABを進学選抜として統合してコース設定をわかり易くしています。昨年に続いて志願者増となっていて、人気が上がっています。首都圏では志願者数の減少に悩む女子校が多い中で、活発な動きと言えます。細田学園、東野も昨年に続いての志願者増となっていて、人気が上がっています。星野共学部、狭山ヶ丘、山村学園、自由の森学園は、昨年は一昨年とあまり変わらない志願者数でしたが、今年は増加しました。星野共学部はSコースを新設、難関大対策を打ち出したことが人気につながっているのでしょう。「星野」と言えば川越の伝統校で、地域では女子校のイメージが強く残っています。後述のように女子部の志願者数はいま一つですので、こうした環境の中での共学部の志願者増は、地域に新しい「星野」のイメージができつつあることを示すものでしょう。狭山ヶ丘は昨年初めて塾・受験関係者向け説明会を校内開催としましたが、こうした点が受験関係者に評価されているようで、人気につながったようです。城北埼玉は隔年的な志願者数の変化です。今年は増える順番でした。自由の森学園の増加は、募集規模が大きい県内私学の中では少なく見えますが、首都圏全般で比較すると「増えた」と言ってよい水準です。独特の教育方針ですから、中3生の増加が志願者の増加に結びついたと思われます。

一方、西武文理と聖望学園、星野女子部、山村国際は昨年に続く志願者減です。

人気にやや陰りが出ているのかもしれません。西武文理は地元受験生のさいたま市方面の学校の人気が上がって、受験生が流れていることも影響しているようです。星野女子部は全体的な女子校人気低下の影響も出ているのでしょう。合格ラインは昨年と大差ない水準だったようです。川越東、慶應志木、城西川越、西武台、立教新座は昨年並みの志願者数でした。慶應志木と立教新座は付属校で難関校ですから、今年は中3生が増える年といっても、付属校志向はあまり上がっていないようです。川越東と城西川越も含めると男子校は4校になります。最近は男子受験生の男子校志向が下がっていますので、その影響もあるのでしょう。志願者が減っていないため、女子校人気よりは男子校人気の方がまだ高いことは確かです。東邦音大東邦第二は今年も小規模な入試でした。武蔵野音大附属は入試結果未公表でした。

4. 県北部

県内の私立高校志願者の増加を象徴するのが、県北部で志願者が増えた学校が多いことでしょう。生徒数の増加は前述の県南部、県西部や後述の県東部の方が大きいはずですが、受験生の県南部志向に少し変化が出ているのかもしれません。県北部と言っても、東武東上線方面と高崎線・東武伊勢崎線方面がありますが、どちらも増えた学校があり、埼玉平成、武蔵越生、東京成徳大深谷、本庄第一、本庄東の増加が目立ちました。

埼玉平成、武蔵越生、本庄東は、昨年が一昨年とあまり変わらない志願者数でしたが、今年は増加しています。人気が上向いてきているようです。また、本庄東の特進は、やや合格ラインが上がったようです。

東京成徳大深谷は女子のみの募集だった総合進学と保育進学を保育・総合系として統合、共学化しました。中堅の学力層の受験生の支持があったようで、昨年減少した志願者数が今年は盛り返し、一昨年並みの志願者数に戻しています。本庄第一は隔年的な志願者数の変化です。今年は増える年に当たりました。本庄東と本庄第一の両方が増えていて、今年は珍しい年でした。

県北部の私立志向は県南部などより低いのですが、今年は公立前後期一本化で、受験生の意識も少し変わっているようです。一方、東京農大第三は昨年が一昨年並みの志願者数でしたが、今年はやや減っています。この間コースの改編等を進める中でレベルアップを図ってきましたが、中堅レベルの受験生に手が届きにくくなっている面はあるでしょう。

大妻嵐山、正智深谷、早大本庄は昨年と大差ない志願者数でした。大妻嵐山はこのところ志願者減少傾向でしたので、歯止めがかかったようです。早大本庄は地元よりも都内からの受験生がめだちます。こちらは共学ですが、前述の慶應志木や立教新座同様、公立中3生が増えても難関付属校志向は上がっていないようです。

5. 県東部(東武伊勢崎・日光線方面)

昌平は昨年に続いて志願者増となっています。今年は最難関大学をめざすT選抜コースを新設しましたが、こうした積極策が人気につながっています。各回合計の志願者数は3,000名を超えました。新設のT特選はかなり高水準の合格ラインだったようです。独協埼玉は隔年的な志願者数の変化を示していて、今年は増える年でした。都内北部からの受験生も多い学校ですので、都内の中3生増加も影響しているようです。

一方、開校2年目の開智未来は志願者が減っています。昨年は開智本校がやや厳しそうな受験生が、なんとかなりそうと思って志願して不合格だった例があったことから、今年は受験生が絞られているようです。地理的な条件も影響しているかもしれません。花咲徳栄は昨年に続く志願者減です。人気にやや陰りが出ているのかもしれません。春日部共栄は昨年並みの志願者数でした。人気にも特に変化はないようです。