埼玉県公立高校、今春の学力検査結果

埼玉県公立高校、今春の学力検査結果

県教育委員会発表の今春の学力検査の結果を見てみましょう。

教科 国語 数学 英語 社会 理科 5科(3科)

11年前期

52.7

40.4

47.4

57.5

45.2

243.2

11年後期

54.1

44.3

46.0

144.4

10年前期

56.2

42.4

52.9

49.5

51.5

252.5

10年後期

59.9

47.6

54.8

162.3

09年

58.0%

53.0%

46.8%

61.0%

50.3%

53.8%

08年

64.8%

48.8%

55.0%

58.8%

51.8%

55.8%

07年

67.0%

50.3%

56.3%

58.3%

56.5%

57.7%

06年

63.0%

48.5%

56.3%

55.8%

55.5%

55.8%


前後期制・100点満点2年目ですが、まず前期を昨年と比較すると社会以外は平均点が下がっていて、特に英語、理科が大きく下がっています。社会は大幅上昇でした。

後期は3科目とも下がっていて国語、英語とも大幅です。100点満点に移行した昨年の問題は記述が増えて難化した、が一般的な見方でしたが、今年は社会以外、さらに前後期とも難化したことになります。

09年までの40点満点の平均点を得点率に換算して比べてみます。

国語は08年まで6割を切ったことがなかったのですが、09年の40点満点最後に5割台となり、昨年はギリギリ6割に届かなかった後期も今年は難化して5割台半ばになっています。

数学は5割前後で推移していましたが、昨年の後期が従来の難度を維持していたのに対し、昨年の前期からの難化路線が続いて今年の前期は40点台ギリギリになっています。

英語は08年まで5割台半ばを続けていましたが、40点満点最後の09年に4割台となり、昨年はその反動から前後期とも50点台の前半となりましたが、今年は再び40点台後半で、09年の得点率よりも下がっています。

社会は06年から09年にかけて5割台後半から6割に達しましたが、昨年大きく下がって50点を切りました。今年はその反動で50台後半と、07・08年ごろの水準に戻しています。

理科は06・07年の5割台半ばから、08年~昨年にかけて5割ちょっとの水準となり、今年は4割台半ばに下がりました。出題形式も変わっていますから単純比較はできませんが、各教科合計も5割台半ばだったのが、今年は前後期とも5割を切ったことになります。


平均点の推移は? 

1978年からの5教科の平均得点率推移を見てみます。(昨年と今年は前期の値を用いています。)

78年では66.8%だった得点率が、84年に57.7%に下がりますが、翌年から60%台に戻します。

その後90年に50%台となり、04年までは50%台半ばから60%の間で、比較的年毎の変動幅が大きい状態が続きます。

それ以後は50%台が定着、07年以降は下がる一方で、今年いよいよ50%を切りました。

こうして見ると、30余年の間に20%近く下がっていること、90年ごろからの約15年は横ばいとして、それをはさんで全体に下降で推移してきたことが分かります。

得点率が下がることは、出題側が意図して行った場合は、わざと問題を難化させたことですし、意図していない場合は思ったほど受験生はとれなかった、ということになります。

この30余年の推移が、意図したことか、意図していなかったことなのか、どちらの面が強かったのかは公式発表だけでは何とも言えませんが、得点率が50%を切るようだと、入りやすい学校(難易度ランクで中位に届いていない学校)では「本当に基礎学力がついていない受験生」と「少しは基礎力がある受験生」の差がつきにくくなりがちです。

それを承知で問題を難化させていたとすれば、今後の県教委がめざす今後の公立高校の姿は「下位の学校でも、中学では中程度の位置にいないと入れない」といった姿なのかもしれません。

現に、公立志向が高くて私立進学校が育っていない地域では、中学のクラスの上位から7割程度までが全員どこかの公立高校に進学し、その下の成績の受験生が私立に進学しています。

こうした進学パターンは地方では良く見かけるものです。90年ごろからの約15年間は県教委としても方向性にいろいろな考えがあったものの、07年以降は「公立校は上位」の路線に舵を切った、ということかもしれません。

なお、設問タイプ・内容を踏まえた分析は6月下旬に県総合教育センターから公表される予定です。